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海洋の空(うつろ)による水質浄化システム

 

海洋の空(うつろ)による水質浄化システム

海洋の空(うつろ)による水質浄化システム
 
1.失われた自然環境を取の戻すことの必要性
瀬戸内海の水域とこれに流入する内陸部の開発が進むと共にこの地域の生活や排水構造 の変化により、水の汚染負荷が増加した傍ら、自然の藻場や干潟の埋立てや港の整備によ って自然型護岸の構造が防災型コンクリ-ト護岸や岸壁に変り、水域おける自浄機能が低 下し、水質環境の悪化に拍車を掛けてきたものと思われる。
中でも、東京湾や大阪湾の海底はヘドロの海である、このような、海底のヘドロは水質 汚濁や生態.漁業環境に大きな影響を及ぼして来た。
これからは、自浄機能の回復を積極的に図っていくことが肝要であると考える。
したがって、従来からの自然の藻場や干潟、自然海浜を保全すると共に自然の藻場や干 潟、自然海浜が内在している自然の浄化機能を積極的に引き出し、システム的に活用しよ うとするのが“「海洋の空(うつろ)」による水域の浄化システム”である。
 
2.「海洋の空(うつろ)」の概要
先に述べたように、 「海洋の空」とは、潮汐変化のある水域を堤体構造で囲う囲繞水域を総称して「海洋の 空(うつろ)」と言う。
特に、水域の浄化にあたっては、浄化しようとする水域を、多空隙を有する砕波堤(以 下「浄化防波堤」という)で囲い締め切ることにより、囲われた水域の内外の水が自然の エネルギ-によってきれいになる。

本調査では、浄化しようとする海域を、「浄化防波堤」で囲い締め切ることによって、 締め切られた水域の内外の水は風や波浪、太陽の光、月や地球の引力、生態の生命力等の 自然のエネルギ-によってきれいになる。
(1)波浪(風)による浄化
「海洋の空」を構成する「浄化防波堤」により海域に自然に発生する波浪を自然に砕波 させ、空気を巻き込み白波となり、波浪曝気が促進され、水中の溶存酸素(DO)が増加 し、海域の活性化が促進する。また風による吹き寄せも海域浄化の1つである。
(2)潮汐(月の引力)による浄化
潮位変化のある水域を「浄化防波堤」で囲うことによって囲われた浄化防波堤の内外で 潮位の位相のずれが生じ、潮汐の度に莫大な海水が浄化防波堤を透過し浄化される。(こ のような水質浄化法を接触酸化という。)又潮間帯では大気と接触し酸素が取り入れられ る。「浄化防波堤」の透過によって大型ごみの濾別も行なわれる。
さらに「海洋の空」の堤体を一部開放するとにより、潮汐の度に激しい潮流が発生し、 水域の混合、拡散、交換が可能である。
(3)重力(地球の引力)による沈降浄化
「海洋の空」は堤体構造で囲われた波浪や潮流のない静穏な水域で、水中の微粒子が沈 降浄化する。(下水で言う巨大な沈殿池である。)
(4)光(太陽)による浄化
光は光合成(炭酸同化作用)により多量の酸素を放出すると同時に窒素、燐等の無機栄 養負荷の生物化が促進される。
さらに、紫外線により難分解性の汚染物質(オイルなどの高分子)を分解する。
また、「海洋の空」を構成し水域の水が清澄になり海底に光が到達するようになると豊 酸素の酸化池としての有機物(海底のヘドロ)の好気分解が進行する。
中でも、夏季には、海面の温度が上昇し、温度躍層を形成し、海面水と底水との水の交 換が無くなるため、躍層下の深水は無酸素状態となり、底性生物は死滅する。
したがって、この水域に「海洋の空(うつろ)」を構成し、水をきれいにし大量の太陽 光を温度躍層下の海底深くに透過させる(サンライトホ-ル)を形成させ、海底の光合成 作用を活発にし、海底に酸素を補給し、底層部の生態の生命を連続して維持しようとする ものである。
(5)生命力(生態系)による浄化
生物が生きていこうとする知恵と力を水の浄化に利用しようとするものである。
物と水が接触していると物の表面に生物膜が発生し、このような生物膜の作用によって、 水中の栄養分が摂取され水がきれいになる。このような生物膜は物の表面に付着するため に表面積が大きいほどこの効果が大きく、潮汐変化によって多空隙を有する「浄化防波堤」 を海水が透過させることにより、堤体に、濫藻類、径澡類、禄澡類さらに、原生動物、袋 形動物、軟体動物、節足動物等が生息し、水中の栄養物を摂取し水を浄化する。
「浄化防波堤」内に取り入れた多くの栄養物は豊富な溶存酸素によって活発な生態循環 作用が進行すると共に「海洋の空」本体の活性化が促進される。 また、食(栄養)連鎖 による生物の大型化、貯留資源化により水中の栄養物の回収利用が可能となる。
以上のようなような自然のエネルギ-による水質浄化の相乗作用によって、更に、その 効果が高められる。
 
 
4.「海洋の空(うつろ)」の実験
このような、「海洋の空」による海域浄化の実験を、泉南市樽井地先の埋め立て予定地 の汚濁河川が流入するの閉鎖性汚濁海域を利用して、平成元年9月より約3年間にわたっ て海域実験を行なった。
この湾奥に「海洋の空」を設置してより、徐々に水がきれいになり始め約3年後には水 が清澄になり、「海洋の空」の外側と内側での主な水質の環境測定結果の平均値でCOD の除去率54%、SS除去率は42%、大腸菌の除去率は84%、オイル除去率42%、 DOは1.2倍となっている。
さらに光合成により「海洋の空」内の溶存酸素(DO)が250%を記録すると共に、 還元状態の真っ黒なヘドロが茶褐色に酸化され、「海洋の空」内に堆積していた約30㎝ の海底のヘドロが自然に無くなり海底のヘドロの下にあった礫が現れるようになった。
また「海洋の空」内外の生態循環作用が活発になり、堤体を構成する堤体の表面には、 かきやふじつぼがぎっしり付着するようになり。さらに、「海洋の空」内外の水中にはボ ラ、カニ、エビ等の魚貝類が生息するようになった。
水辺にはゴカイやカニが繁殖し、ハマタンポポや葦が群生し、生態環境が甦った。
 
5.大阪湾の浄化構想の提案
瀬戸内の中でも、大阪湾の汚濁源は、湾奥に流入する大和川と淀川である。
大和川は河口でのCODが年平均11㎎/lで、流量は年間平均流量は225万〓/day、 平水流量は約118万〓/dayで、CODの年間負荷量は約9千トンである。
また、淀川は枚方大橋で年間CODが平均4.5㎎/lで、流量は年間平均流量は約2, 136万〓/day、平水流量は約1,619万〓/dayで、CODの年間負荷量は約3万5 千トンである。
したがって、大和川の河口に合計面積約1平方km2(日浄化能力約200万〓/day)、 淀川の河口に合計面積約10㎞2(日浄化能力約2,000万〓/day)の「海洋の空(うつろ)」 を設置すれば、大和川や淀川の総流量に匹敵する水の浄化が可能である。(潮位差1m)
さらに、このような「海洋の空(うつろ)」内の静穏浄化水域の海洋空間を防災やエネ ルギ-基地、海洋牧場や魚つり公園等に利用することが可能である。
(ヘドロの浄化) 現在、大阪湾の透明度は約平均2.5m程度であるが、ウツロの内 部で6m、時には8mを記録することもあり、ウツロ内から流出するきれいな水によって外 側の水もきれいになる。 したがって、先の大和川や淀川の総流量に匹敵する年間約10 0億〓(2,200万〓/day×365day)の水を常に浄化し続けることにより、大阪湾全体の水質を きれいにし透明度を2.5mから→6m→さらに8mと浄化し、太陽光の到達水深(透明度の 3倍)7.5mより→18.0mから、さらには→21.0mと海底深く光を当達させることが出来 れば大阪湾の、海底のヘドロの浄化や底性生物の生息が可能になると考える。
 
 
6.あとがき
これからは、環境保全の維持管理に要する経費の財政負担が、国や国民の上に大きくのし かかろうとしている現在、自然のエネルギ-を有効に利用した“「海洋の空(うつろ)」 による水域の浄化システム”はランニングコストが殆どかからず、しかも、赤潮等水の汚 濁物質が生態循環(生物連鎖)の中で、新しい水産などの資源として生まれ変わるために、 廃棄物が殆ど出ない事も当システムの大きな特徴のひとつである。
さらに、今後進めようとするミチゲ-ション(開発に伴い失われる機能の補償)として も大きな効果を発揮するものと期待されている。
最後になりましたが共同研究者として永きにわたってご協力戴いたグル-プの皆様に感 謝申し上げると共に、今後瀬戸内海などの環境保全と開発の具体化に向けてお役に立つこ とがあれば幸いである。
 
参考文献
1.赤井一昭、上田伸三、和田安彦、石谷寿、村井穂徳 瀬戸内海の総量規制と人工環礁

土木学会関西支部昭和61年度年次学術講演会概要、昭和61年度5月

2.赤井一昭、上田伸三、馬家海、馬野史朗、船野久雄、付着生物による海水浄化の研究

海洋開発論文集Vol.8 1992年6月

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